Interviews
研究者インタビュー

#10
「分子の声=環境応答」から植物の気持ちを紐解き代弁する

農業・生態系保全ユニット小島 俊雄
役職/肩書 准教授
所属 応用生物学野
学歴/経歴 横浜市立大学大学院 総合理学研究科 博士課程中退、博士(農学)
研究
キーワード
植物、環境応答、遺伝子・DNA、ストレス
研究者情報

専門分野について教えてください

私の専門は植物生理学・分子生物学です。生命現象を細胞より小さい「分子」の世界、「分子」の動きから理解しようとする分野です。
移動できない植物が過酷な環境下でどのように生き抜こうとしているのか、その巧妙な生存戦略を分子レベルで解析しています。

特に力を入れているのが「塩ストレス」に対する植物の「環境応答」ですね。
地球の陸地面積の約10%が塩害土壌と言われていますが、そんな植物が育ちづらい土地でも、生態系・環境を修復しながらストレスに強い植物を作ることで持続可能な農業生産に貢献することを目指しています。

現在の研究を志したきっかけは何ですか

高校時代、遺伝子という単なる「物質」が、生命現象を作り上げていることに「なぜなんだろう」と興味を持ったのが原点です。

じつは当初、動物の免疫に興味がありましたが、大学の研究室配属の際、ジャンケンで負けて微生物の研究室に入り植物の研究に取り組むことになりました(笑)。
でもそこで、移動することができない植物が、環境の変化にどう応答しているのかを調べた時、「動けないからこそ、巧妙な戦略がないと生き残れない」ことに気づきました。
物質である分子たちがどんな生存戦略をとっているのか、全部つなげてみたい!と思い、分子を通じて植物の”声”を聞くこの研究にのめり込んでいきました。

どんなところにやりがいを感じていますか

身近な疑問や違和感を調べてみて、そこにある現象を紐解いてみると、すごく複雑だけど見事なまでに理にかなった世界が待っていることが分かるところですね。

植物が環境の変化に対して姿・形を変える時、その分子の世界を覗くと、長い年月をかけて作り上げられてきたシステムが構築されています。自分で手を動かして実験し、その一端に触れられた時は「おお、すごい!」と感動します。

また、「あ、植物はこう考えていたのか」と理解できた時、「じゃあ次はどうなるの?」と新しい疑問が湧いてきて、研究が続いていくところに面白さを感じています。

Gtechの魅力は何ですか

自分たちの研究の角度だけでは見えないことが、他の先生方と一緒にやることで見えてくる点です。
Gtechでは、温室効果ガス削減を目指した大豆―土壌微生物共生系に関する研究に参画しています。私は植物の細胞よりも小さい世界を見ているので、いわば「植物の気持ち」を知る役割です。

逆に、外の土壌で何が起きているか、温室効果ガスがどうなっているかという情報は、他のチームの先生方から教えていただきます。「土壌でこんなことが起きていたのか」と知ると、じゃあ植物は今こういう気持ちなのかな?、という新たな理解が生まれます。

多様な分野の先生方から違った角度の意見が出てくるので、植物の反応をより正確に理解できるのが大きな魅力であり、勉強になっています。

この研究でどんな目標や使命をお持ちですか

「植物の代弁者」になることです。人間にとっての食糧増産や温室効果ガス削減という目標も大切ですが、それに関わる植物の気持ちもしっかり理解してあげる必要があります。
植物だって無理やり生産性を上げさせられたらストレスを感じるかもしれません。だから、細胞の中の世界を覗かせてもらって、「今、大豆はこう感じているよ」「本当はこうしてほしいみたいだよ」ということを人間に伝えてあげたいですね。

人間の意図と植物の「こうなりたい」が合致して、植物にとっても気持ちよく、人間にとっても良い結果が出る、そんな関係を作れたらと思っています。

これからGtechにどんなことを期待されますか

研究室で得られた複雑なデータを、農家の方や社会に伝わる言葉に変換して届けたいですね。「今、植物はこういう気持ちでいるから、この資材を使うといいですよ」「この微生物を使うと大豆が喜びますよ」といったふうに、言葉を喋らない植物の感覚を、日常的な言葉で伝えられるようになりたいです。
植物のポテンシャルを最大限に引き出す栽培技術が確立されて、温室効果ガスの削減や食糧問題の解決といった地球規模の課題解決に実質的に貢献していくことを期待しています。

Gtechに関心をもっている方へメッセージ

地球温暖化のような地球規模の課題解決には、研究者だけでなく、社会の皆さんの関心も必要です。
茨城大学では、いろいろな分野の人たちが様々なアプローチで研究を展開しています。ぜひ大学のホームページ、オープンキャンパスを通じて、私たちの挑戦を見ていただきたいです。
オープンキャンパスでは、高校生だけでなく親御さんからの鋭い質問も大歓迎です!

学生さんに向けたメッセージ

日常の中の「なぜ?」や違和感をそのままにせず、ぜひ科学の目で覗いてみてほしいですね。

例えば、植物の根が下に伸びるのは、根の先端にあるデンプンを含む小さな粒が「耳石」のように沈むことで、細胞が重力の方向を感じ取っているからなのです。そんなふうに、身近な植物の反応一つにも、驚くほど精巧なメカニズムが隠されています。

「植物ってすごい!」という感動や、謎を解き明かす研究の醍醐味を味わってほしい。理科離れなんて言わずに、その不思議に触れて、研究を通じて新しい世界を楽しんでほしいなと思います。

インタビュー一覧へ