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研究者インタビュー

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イチゴ農家の栽培技術を活かした環境配慮への新しい一歩

農業・生態系保全ユニット望月 佑哉
役職/肩書 講師
所属 応用生物学野
学歴/経歴 東京農工大学 連合農学研究科 生物生産科学専攻 博士課程修了
研究
キーワード
野菜・果樹
研究者情報

専門分野について教えてください

私の専門は野菜や果物を研究対象に扱う「園芸学」です。研究内容は大きく分けて二つあります。
一つは園芸作物の「生産」です。特にイチゴを中心に、栽培技術や収量アップのための管理方法などを、品種の特性に応じて研究しています。

もう一つは「収穫後生理」という分野で、青果物を長持ちさせる技術の確立にも取り組んでいます。いま、園芸作物に限らず日本の農産物の輸出額は急上昇しています。イチゴはここ数年で約10倍にも増加しているので、東京都などと共同研究も行いながら、高機能のフィルムを使った貯蔵方法や、殺菌処理など、イチゴやブルーベリーの貯蔵技術の向上を目指しています。

研究を志したきっかけは何ですか

きっかけは、祖父母がイチゴ農家だったことです。
静岡の実家の近くで幼少期からイチゴの生産を間近で見てきました。はじめは「イチゴ農家を継ぐ」という決心のもと農学部に入学しました。残念ながら畑を継ぐことは叶いませんでしたが、荻原勲先生(東京農工大学名誉教授)のもとで学びながら博士号を取得し、卒業後もイチゴやトマトなどの園芸栽培について研究を深めることにしました。

現在、大学内のハウスで15品種ほどのイチゴを栽培しながら研究しています。他の大学でもイチゴの栽培は研究されていますが、私のベースに「イチゴ農家」というルーツがありますので、イチゴ栽培の分野では誰にも負けないように、という強い思いがあります。

どんなところにやりがいを感じていますか

植物の栽培は、ただ作れば結果がついてくるというわけではありません。

私は植物を人間に例えて話すことが多いのですが、手間や時間をかけて対応すれば、植物は必ず答えを出してくれます。管理を怠れば、機嫌が悪くなることもあります。それを理解しながら接していると、暑さに強い品種にはこういう対策をすればよい、寒さに強い品種にはこうしよう、といった形で品種ごとの特徴に応じた対策が分かってきます。

そういった対話のようなやりとりから最適な管理方法を見つける過程は、とても面白いですね。

Gtechでの研究テーマは何ですか

私が主に栽培しているイチゴやトマトは、ハウス栽培が多いです。
一般的な畑で栽培される作物と違ってハウスなどで作る施設園芸の場合、「養液栽培」といって肥料を水に溶かした培養液を与え続けるのが一般的です。与えた量の3割くらいは外に流れ出るようになっています。そのほうが生育や収量にとって良いと言われているのです。

しかし、流れ出た肥料は環境負荷につながっていきます。つまり「環境に悪影響を与えながら栽培している」とも言える施設園芸は、Gtechの趣旨とは真逆です。けれど、いまそこに注目して研究を行っている例は少ないので、施設園芸での環境配慮には大きな可能性を感じています。

美味しいものを作ることや収穫量を増やすことだけではなく、その先の環境への影響までを考えた施設園芸技術の確立が、私の役割だと思っています。
施設園芸の中で、例えば「どのような栽培管理をするとN₂Oを多く出してしまうか」ということが分かれば、「これだけはやってはいけない」と農家さんに伝えることができると思うのです。そういった技術を明確にしていきたいですね。

Gtechの中で他の研究とどんなつながりがありますか

私は作物の生産の面では技術がありますが、環境配慮の部分ではまだまだこれからです。N₂Oの量を計測する方法も一から学んでいるところです。

Gtechには、植物の専門の先生もいらっしゃれば、機械の専門家や植物を3次元で計測する先生もいらっしゃいます。そういった先生と協力することで、例えば「最適な肥料の使用量」や「最低限必要なエネルギー」などを明確にできれば、無駄なものを減らすことができます。それだけでも温室効果ガス削減につながりますので、他分野の先生と協力しながら、環境負荷を抑制できる栽培技術を見つけて最適化していきたいです。

この研究でどんな目標や使命をお持ちですか

Gtechが掲げる目標は、これからの時代には絶対に必要になってくるテーマだと思います。
園芸の世界でも、「地球環境に優しい栽培技術」を生み出していきたいです。そのためには温室効果ガス削減につながる栽培技術や品種特性などを明らかにしながら、学生と一緒に進めて教育に変えていきたいと考えています。

Gtechで園芸の分野は私一人しかいませんので、期待されている分、一から新しい研究をはじめる気持ちで自分なりの強みを生かしたアイデアを練っていきたいですね。いずれは地球環境の課題解決につながる組織として茨城大学が先頭に立って結果を出せるよう、貢献したいと思っています。

学生さんに向けたメッセージ

興味を持って野菜や果物を見て欲しいと思います。
実際に自分の体を動かして生産してみると、その野菜や果物が「どうやって作られているのか」を自分なりに学ぶことができ、農家さんがいかに大変か、どこにどれくらい肥料を使っているか、などが見えてきます。それは環境問題を考えるうえでも重要になると思います。

野菜や果物が好きな人と、ぜひ一緒に研究したいですね。

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