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研究者インタビュー

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植物と共生する微生物「エンドファイト」で農業と環境の未来を創る

社会共創ユニット成澤 才彦
役職/肩書 教授
所属 応用生物学野
学歴/経歴 筑波大学大学院農学研究科農林学専攻(博士課程)修了
研究
キーワード
微生物、生態系、エンドファイト
研究者情報

専門分野について教えてください

微生物生態学研究室で、植物と微生物との相互作用、特に共生関係を研究しています。
実は自然界の植物は、ほぼ100%微生物と共生して生きているのです。我々動物に腸内細菌がいるように、植物の葉や茎、根にも目に見えない菌類が生息していて、それぞれ種類も違えば役割も違います。

私が研究しているのは、「根」に共生する菌類「エンドファイト」です。腸内細菌と同じように、菌類が根の内側まで入り込んで植物と一緒になると、植物の姿が大きく変わります。それは、植物がエンドファイトの共生を受け入れて「一つの共生体」になることで、本来なら根で吸うことができないような栄養素を菌糸が吸って供給してくれたり、植物が元々持つ遺伝子を活性化させて、暑さや寒さ、病気などの環境ストレスに強くなったりするということなのです。

こうした植物の内部で生きるエンドファイトの中でも、森林生態系で植物の植生を支えている「ダークセプテイトエンドファイト(DSE)」という菌類に注目して、農業に利用しようというのが私の研究テーマです。

現在の研究を志したきっかけは何ですか

祖父がパティシエ、父親がシェフという家庭で育ち、昔から食べることが大好きでした。美味しい食べ物はやっぱり技術よりも「素材」だよね、じゃあその素材の中でも美味しいものはどういう風に作られていくのだろう?と考えていった時に、それを司っているのが土の中の微生物だ!と気づいて土壌微生物の道に行きつくわけです。

その後、大学院修了後に就いたポスドクでの課題が「ハクサイの土壌病害を、化学農薬を使わずに生物的な方法で防除する」というものでした。この課題に向き合った時、ハクサイの根と共生しながら植物自体を病気に強くする微生物を見つけ出したいと考え、スクリーニングを始めたのが現在の研究のきっかけです。

どんなところにやりがいを感じていますか

実験をしていて自分が想定していない、「起こるはずのないことに気づく」のが面白いですね。

例えば、病気を抑えるためのプロジェクトでイチゴを育てていた時のことです。
イチゴの病原菌が好む23度の温度一定、長日条件で実験を行い、DSEがこの病気を抑える効果を検証していました。結果はうまくいったので、これで終わりとなるのですが、気づいたら花が咲いて実もついていたのです。
この条件は、通常、イチゴの花は咲かないはずです。そんなこと起こるわけない!と、もう一度調べていくと、やはり花が咲かない条件下にも関わらず、エンドファイトの影響で花と実をつけたことが分かるわけです。
そういう想定外の結果が出て、それに気がつくかどうかが研究の醍醐味ですね。

Gtechの中で他の研究とどのようなつながりがありますか

私はGtechの中では、研究面というよりも「社会実装」の役割を担っています。基礎研究の成果をビジネスとして外に広げ、実際の農業や環境課題の解決へと繋げていく役割ですね。
やはり農業も産業ですので、今できない課題を解決して農家さんの要望に応えていきたいという思いがあります。
Gtech内の具体的なつながりで言うと、例えば私がエンドファイトを使って土の中の微生物をコントロールし、植物の専門家の先生に栽培と評価をお願いするという形で、それぞれの専門分野を活かしたコラボレーションを行っています。

この研究でどんな目標や使命をお持ちですか

荒れてしまった土地の植生回復と、CO₂排出の抑制を両立させることです。

森林での「植物と微生物のネットワーク」を解析したところ、私たちが研究しているエンドファイトが、森林生態系を保つには絶対に欠かせない重要な役割を果たしていることが分かりました。
そのため、森林の中で生態系が崩れた場所には、足りなくなったエンドファイト(微生物)を補ってあげることで、植生を回復することができるはずです。

また、土壌中の普通の微生物は呼吸によってCO₂を排出します。けれど、エンドファイトは植物と一体となっているため、エンドファイトの呼吸によるCO₂排出はそのまま植物に吸収され、実質プラスマイナスゼロになります。
さらにエンドファイトが土の中の栄養(有機物)を食べることで、普通の微生物の活動(呼吸)が抑えられ、結果的に土全体から出るCO₂量を最大50%も削減できるのです。

Gtechに関心をもっている方へメッセージ

私は「植物の姿は微生物と一緒になっている」ということを皆さんに認識していただき、その考え方で、作物生産そのものを変えるぐらいの大きな変革を起こしたいと思っています。
現在、農地の劣化により地球の人口を支えられないと言われています。良い土で良い作物が収穫できるのは素晴らしいですが、あまり良くない土壌環境でも、微生物の力を借りてある程度収穫量が見込めるとなれば価値は大きく変わってきます。
今できない農業の課題に私たちの研究技術を掛け合わせて、生産性を高めていきたいですね。

学生さんに向けたメッセージ

学生の皆さんには「良い失敗をたくさんしてほしい」と伝えています。人から言われた通りにやるのではなく、自分でしっかり考え、自分の責任で行動した結果の失敗は、必ず自分自身の大きな財産になります。失敗して「なぜうまくいかなかったのだろう?」と悩み、考えることから本当の研究がスタートします。
私から答えを言うことはありません。うまくいかないことに悔しい思いをしながらも、「結果が出るまで頑張ろう」と自ら考え、行動し、解決していく。そんなふうに、楽しく没頭しながら研究に向き合ってくれることを期待しています。

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